内定後に求人と異なる給料に変更されたときの対応
内定を得た後に、企業から、求人で提示された給料よりも低い金額を提示され、不満を感じる場面があるかもしれません。
今回は、内定後に求人と異なる給料に変更された際に、会社側に責任を追及できるかどうかや、具体的に検討すべき対応について解説します。
内定後に求人と異なる給料に変更された際に、企業に責任を追及できるケース
企業が求人票に記載した条件と異なる給料で労働契約を結ぼうとする行為は、直ちに禁止されるものではありません。
しかし、次のような一定の条件下では企業に対して法的な責任を問える可能性があります。
内定により労働契約が既に成立しているケース
内定により労働契約が既に成立していると認定される事案においては、内定時に提示された給料と実際に支払われた給料が異なっている場合、企業に対し、内定時に提示された給料に不足する未払分を請求できる可能性があります。
事案によりますが、企業から内定通知書が送付された時点で、法的に始期付・解約権留保付労働契約が成立したと認定される場合があります。
この場合は、内定通知書の送付後に、企業が給料を一方的に減額することはできないのが原則となります。
求人票の記載内容が虚偽であったケース
職業安定法は、企業に対して、求人時に労働条件を明示すべき義務を課しています。
そのため、企業があえて求人票に虚偽の内容を記載していた場合には、企業は職業安定法違反の責任を追及される可能性があります。
最初から支払う意思のない高い給料を求人票に掲げ、応募者を集めた後に低い条件を提示する行為は、行政上の責任を問われるだけでなく、民事上の損害賠償請求の対象となる可能性もあります。
信義則上の義務に反するケース
信義則上の義務とは、取引や法律関係において、相手の信頼を裏切らずに誠実に行動すべきであるという義務です。
内定に至る過程で特定の給料額を前提とした説明が繰り返され、労働者がそれを信頼して現在の職場を退職するなどの不利益を被った場合、企業には労働者の期待権を侵害したことに対する法的責任が生じる可能性があります。
内定後に求人と異なる給料に変更されたときの対応
内定後に求人と異なる給料に変更され、そのことにつき企業と争うことを検討したい場合、以下の対応を検討すると良いでしょう。
給料変更の理由につき、書面での説明を求める
求人時の提示と異なる給料になった理由の説明を求めると良いでしょう。
口頭だけでは曖昧な説明を受ける可能性があるため、記録に残る書面やメールなどで回答を得た方が良いでしょう。
たとえば、企業から、労働者の経験やスキルが想定に達していなかったことを理由とした給料変更であるとの説明があった場合には、自身に不足していると判断された能力や不足していると判断した根拠について説明を求めると良いでしょう。
給与の変更により内定を辞退した場合で、前職の退職など損害が生じている場合、損害賠償請求の検討
給料の引き下げを受け入れられず内定を辞退した場合で、前職の退職など損害が生じている場合、事実と異なる労働条件の提示により信頼が害されたこと(信義則違反)を根拠に、損害賠償の請求が可能な場合があります。
この損害賠償請求には法的な専門知識が求められるため、弁護士への相談をご検討ください。
労働局に相談する
給料の減額について企業との直接交渉が困難な場合は、労働局に相談するのもひとつの選択肢です。
各都道府県の労働局にある総合労働相談コーナーを利用することで、労働問題に関する助言を受けることができます。
内定後に求人と異なる給料へ変更されることへの備え
内定後に求人と異なる給料へ変更される可能性を考慮して、事前に備えておいた方が良い事項は次の通りです。
求人票の保存とやり取りの記録
求人票の募集要項は募集が終了すると削除されてしまうことが多いため、印刷やスクリーンショットで保存しておくと良いでしょう。また、採用担当者とのやり取りは記録し保存しておくと良いでしょう。
これらの記録は、求人時に提示された給料が内定後に変更された事実の証明に役に立つことが期待されます。
内定時での労働条件通知書の交付
内定が出た際には、労働条件通知書などにより労働条件を書面により明示してもらいましょう。
労働条件の明示義務は強化されており、企業側にはより詳細な労働条件の明示が義務付けられています。
内定時に求人と同様の給料を提示されたにもかかわらず、実際に支給される給料が異なる場合には、企業に責任を追及できる可能性が高まるため、内定時に労働条件通知書を交付してもらって保管しておいた方が良いでしょう。
まとめ
今回は、内定後に求人と異なる給料に変更されたときに責任を追及できるケースや事前の備えについて解説しました。
求人と異なる給料に変更することは直ちに禁止されるものではありませんが、企業に責任を問うことが可能な場合もあります。
内定後に求人と異なる給料に変更されてお困りの方は、弁護士に相談することをご検討ください。
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- ・早稲田大学法科大学院修了
- ・2013年 弁護士登録(登録番号 47966)
- ・2019年 池袋副都心法律事務所開設

- メディア掲載
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- 「ビジネスロー・ジャーナル」 2015年9月
- 「会社法務」 2019年12月
- 「毎日新聞」 2020年10月
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